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​【 concept 】

写真を通して、自分が接している世界の細部や目には見えない内部に関して少しでも多く受け取ることができたら嬉しい。確かに存在することも、そうでないただの空想だと思われていることもあるけれど、僕自身はそれらを隔てることなく考えているつもりだ。写真は面白い。つまらない現実もレンズを通して、化学的な工程を経て、何か別のものに変換させることでこれまでとは違う捉え方ができるようになる。何となく魔法のよう。何もないと思っているところにも本当は何かあるのかも知れないと考えるのは自由だし、みんながあると思い込んでいる物事も本当は幻想なんじゃないかと疑ってみるのも面白い。

写真を作り続けることで自分にとっての本当の世界ができあがっていくのかも知れない。

​【 Gallery 】

​《 銀塩プリント 》

​通常の銀塩印画紙にプリント、スキャン

​《 市販の銀塩乳剤から自作した印画紙にプリント 》

市販されている銀塩印画紙ではどこか整いすぎていると感じ、自分の持っていた写真という四角い枠の概念を壊すために、FomaやRolleiで販売している銀塩乳剤を使用して銀塩印画紙を自作することにした。支持体には好みの水彩紙を選び、各工程に耐えられるよう適切な処置を施した上で銀塩乳剤を塗布した。通常の印画紙と比べ、乳剤の厚みや支持体を自分で制御できる分、銀における黒のクオリティーにこだわることができる。均一に乳剤を塗らないので、そのままにしていると印画紙は乾燥後強く歪む。

​《 Silver Pictgraphy 》

水彩紙にアクリル絵具でペイントした上に銀塩乳剤を塗布し、ネガの画像を焼き付けたミクストメディア。

撮影時に受け取った世界の印象を色によって表現し、そこに銀が描く仮想現実としての黒をのせることで、新しい価値観、世界の解釈を期待した作品。

​《 Alchemical Amoeba》

現在では、自分の思う世界の印象を出すためにより根源的な手法や形態、また制作工程自体に儀式や祈りのための間を必要としたので、硝酸銀やハロゲン塩などの薬品から銀塩乳剤から自分で製作するようになった。乳剤は暗室内で、任意のモル濃度の各水溶液を加熱攪拌しながら混合し、適切な温度、時間で熟成させることで、好みのコントラストや感度などコントロールしながら製作する。処方はもちろんのこと、塗布方法、支持体の処理方法など実験、研究を重ね現在の形に至った。

そんなことをしていると、ある時から古代の錬金術に関する記述が頭から離れなくなった。卑金属から銀や金などの貴金属を化学によって変成させるために研究され始めた錬金術は、不老不死の薬やホムンクルスの生成など金属に限らず無生物から生命体を、またその魂を錬成することまでも試みた。

ぼくはそんな過去の記述から感銘を受け、貴金属である銀を使い空想的な化学によって生命体を作り出そうと考え、自作した銀塩乳剤からアメーバ(amoeba)を製作するようになった。

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